子どもの虐待死が続くなかで国もようやく対策検討に入るとの報道。
具体的には民法「822条」を見直すらしいが,およそ先進国と言われる国々の中でこの野蛮な「懲戒権」なるものを規定するのは日本くらいであり,いかにも遅きに失した感がある。
政府・与党は、児童虐待防止に向け、両親など家庭内の体罰を禁止する法改正の検討に入った。(2019.2.17 毎日新聞)
この懲戒権は民法820条「親権」の内容として次のように提示されている。
- 身上監護権(居所指定権,懲戒権,職業許可権など)
- 財産管理権(代理権,同意権など)
そして「親権を行う者は,子の利益のために行われる子の監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる」とされているのである。
※参考までに,子どもの生育環境の違い(富裕家庭,貧困家庭)によって「許される懲戒の範囲も異なる」とした目を疑うような判例(1960.2.13 東京高裁)もある。
しかし懲戒権の源泉となる親権について英国の「児童法」(Children Act)では…
- 「親権」(Parents Rights) ⇒ 「親責任」(Parents Responsibility)
- 養育は親の「権利」というよりも「責任」である
…と捉えられている。
子ども存在への向き合い方が「受動的権利」(大人から与えられた権利)から「能動的権利」主体者へと変化しているこの時に,日本特有の「しつけ」概念とともに「親権」(親と子の関係)そのものの再吟味こそが喫緊の課題と考えるのは筆者のみであろうか。大方のご意見を伺いたい。
【補遺】施設およぴ学校における懲戒権の行使について
一時保護(里親委託)・児童福祉施設入所中で親権者のいない児童(含む親権喪失・停止中)に対して児童相談所長・施設長は親権を代行します。
つまり施設長は「懲戒権」を行使できるのです。しかし,そのことが施設職員による体罰等の免罪符になってはいけません。(愛ある体罰などというものは存在しないのです)
また,学校教育法(11条)でも校長・教員が「教育上必要があるときは児童や生徒に懲戒を加えられる」とされていますが体罰(学級で反省文を読み上げさせるなどの心理的体罰も含む)は許されないことを付言します。
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