定期通院している病院の待合室での出来事です。
車椅子に乗って診察の順番を待つお婆さまと娘さんであろうご婦人が,何を話すでもなくお二人で待合スペースにおられました。
ようやく診察の順番が回ってきたのでしょうか「○○さん,△▽番診察室へお入りください」というアナウンスに反応して,お婆さまが右手に杖を持ちながら,ゆっくりとした動きで「よおーっこら,しょーっ」と車椅子から立ち上がられました。
付き添いの婦人(娘さん)もお婆さまの左側から立位維持をサポートしながら,お二人でゆーっくりと診察室へ移動を始めました。
お婆さまの歩幅は極めて小さく,すり足で,ほんとうに本当にゆっくりなものですから周囲の皆さんも見るとは無しに,心配そうに気にしている気配が明らかに広がっていました。
その時です,診察室への入室があまりにも遅いことをいぶかって?外来看護師さんが迎えに来られました。
そして「おばあちゃん,あそこの車椅子に乗りましょう」ときっぱりとした口調で指示なさいました。
しかし,無言ではありましたが,お婆さまの態度からは「イヤ,私は歩いて先生にお会いするんだ」という強い意志が伝わってきます。
”元気に歩ける様子を主治医に見せたい”お婆さまと”安全に時短で診察を進めたい”看護師さんとの板挟みで困惑顔の娘さんでしたが,結局は看護師さんの指示に従ってお婆さまを車椅子に座らせました。
これは時間にしたら僅か(わずか)数十秒間の出来事でしたが,私にとってはいつも気になる「三者」問題(サービス提供者・利用者・家族)の典型例でした。
ロジャースの「パーソン・センタード・アプローチ」(Person centered approach)はとても解りやすい原則なのですが未だに悩んでしまいます。